コミュニケーション百景:ムダのない、美しいコミュニケーションとは

本日より「コミュニケーション百景」シリーズを開始いたします。

このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。(詳しくはこちらから)

新年の初釜に参加して再認識したことがある。人の動きが美しいことである。特に家元の茶を点てる一連のしぐさが実に美しい。

茶道の本質は、“非日常”を創造するところにある。茶道は以下の3つのことで“非日常”をつくり出す。

①空間(茶室、庭)
②道具(茶道具、掛け軸、生け花)
③動き(作法、挨拶、歩き方、座り方、立ち方、)である。

特にビジネスマンにとっては、この“非日常”を経験することによって日々の集中力を飛躍的に高めることができる。その結果、新たな発想が生まれ、ビジネスでの攻めの視点がつくれる。すくなくとも、自分にとっては、これが最大の効用だと考えている。

茶道では一般的に茶室や道具に関心が集まりがちだが、茶の飲み方、茶器の扱い方、挨拶の仕方、歩き方、座り方、立ち方など一連の作法が生み出す人の動きが、実は茶道の醍醐味ではないかと最近思うようになってきた。

もてなす亭主や半東(亭主の補佐役)の動きだけではない。もてなしを受ける客の動きも、亭主の動きとシンクロし、ひとつの“動き”の芸術作品をつくり出している。その全体の動きの中に自分が参画しているという意識が“非日常”を感じさせてくれる。

動きが美しいとは“ムダ”のない動きであると言うことである。“ムダ”のない動きは美しいだけではなく、パワーを秘めている。

ムダのない体の動きが途轍もない力を発揮することを太極拳で実体験したことがある。太極拳の動きも実に美しい。武道のように体から最大のパワーを引き出すことを極めていくとムダのない、美しい動きにたどり着く。

茶道でもパワーが求められる。よろけずに垂直にスーと立ったり、座ったりする動きをひとつ採っても結構しんどい。数時間、茶道の作法をしっかりと落ち度なくこなすにはそれ相応のパワーは必要不可欠である。それを支えているのがムダのない動きである。

このように考えていくと、「ムダのないコミュニケーションとは何か」、「それはどのようなパワーを生み出すのか」、「コミュニケーションの美しさとは」などなど想像が広がってくる。

“ムダのない、美しいコミュニケーションとは何か”というテーマをもう少し深堀してみたいという衝動に駆られ始めた。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

twitterアカウント:@ShinTanaka